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腟の乾燥・性交痛の原因と対策|濡れない悩みを解説|MURU MURU
腟の乾燥や性交痛は、更年期だけでなく、授乳、薬、ストレス、体調、洗いすぎ、十分に安心できない状況でも起こります。原因の見分け方、潤滑剤と保湿剤の選び方、受診目安、治療の選択肢まで一次情報をもとに整理します。
目次を見る 「濡れない」と感じると、自分の気持ちが足りないのではないか、相手を好きではないのではないか、年齢のせいでもう仕方ないのではないか、と一人で抱え込んでしまうことがあります。けれど、腟の乾燥は珍しいことではありません。更年期だけの問題でもありません。ホルモン、授乳、薬、ストレス、睡眠不足、痛みへの不安、洗いすぎ、皮膚や粘膜の病気、パートナーとの関係性など、いくつもの要因が重なって起こります。
大切なのは、「濡れるかどうか」を気持ちの証明にしないことです。腟や外陰部のうるおいは、血流、粘膜の状態、ホルモン、神経、心理的な安心、刺激の強さ、痛みの記憶に影響されます。好きな相手でも乾くことはあります。性欲があっても痛みが出ることはあります。逆に、体が反応していても気持ちが追いつかないこともあります。体の反応だけで自分の本心を裁く必要はありません。
この記事では、腟の乾燥や性交痛がなぜ起こるのかを、原因別に整理します。さらに、潤滑剤、腟保湿剤、洗い方、薬の見直し、婦人科で相談できる治療、パートナーへの伝え方までまとめます。医学的な説明も入れますが、読みやすさを優先して短い文で進めます。
最初に前提です。この記事は一般的な健康情報です。強い痛み、不正出血、閉経後の出血、いつもと違うおりもの、悪臭、かゆみ、発熱、下腹部痛、排尿時痛、妊娠中、がん治療中、性暴力のあと、性感染症の不安がある場合は、セルフケアだけで済ませず医療機関へ相談してください。腟の乾燥に見えても、感染症、皮膚疾患、子宮頸部や子宮内膜の病気、外陰痛、骨盤底の緊張などが隠れていることがあります。
腟の乾燥とは、腟や外陰部の粘膜が乾き、摩擦に弱くなり、不快感や痛みが出やすい状態です。症状は人によって違います。性行為のときだけ痛む人もいます。下着がこすれるだけでヒリヒリする人もいます。座る、歩く、運動する、排尿する、タンポンや月経カップを入れる、といった日常動作で違和感が出る人もいます。
よくある症状は、乾き、ヒリヒリ感、かゆみ、灼熱感、性交痛、挿入時の引っかかり、性交後の少量出血、排尿時のしみる感じ、頻尿、繰り返す膀胱炎のような症状です。NHSも、腟乾燥では痛みや不快感、かゆみ、尿トラブル、尿路感染の繰り返しが起こりうると説明しています。
腟の中は、常に同じ量の水分で満たされているわけではありません。月経周期、年齢、体調、睡眠、ストレス、薬、授乳、性的興奮、パートナーとの安心感で変わります。生理前に乾きやすい人もいます。排卵期に分泌物が増える人もいます。更年期以降に日常的な乾燥を感じる人もいます。
「濡れない」という言葉には、二つの意味が混ざりやすいです。一つは、性的な場面で自然な潤滑が足りないことです。もう一つは、腟や外陰部そのものが日常的に乾いていることです。前者は緊張や刺激の不足でも起こります。後者はホルモン低下や皮膚粘膜の変化が関係することがあります。両方が同時に起こることもあります。
乾燥が続くと、摩擦で小さな傷ができやすくなります。傷があると、次の性行為や挿入でさらに痛みを感じます。痛みを予想すると体がこわばります。こわばると腟まわりの筋肉が緊張し、さらに痛みが増えます。この悪循環に入ると、潤滑剤だけでは足りないこともあります。
腟の乾燥で大きな要因になるのが、エストロゲンの低下です。エストロゲンは、腟や外陰部の粘膜の厚み、弾力、血流、うるおい、腟内環境に関わります。Mayo Clinicは、低エストロゲンにより腟の組織が薄く、乾き、弾力が少なく、傷つきやすくなると説明しています。
エストロゲンが下がる場面は、更年期や閉経後だけではありません。授乳中、出産後、卵巣を摘出した後、抗エストロゲン薬の使用中、がん治療後、ホルモン療法中、低用量ピルなど一部のホルモン避妊薬が合わないときにも起こります。Mayo ClinicやNHSも、授乳、閉経、薬、がん治療などを腟乾燥の原因として挙げています。
更年期の腟乾燥は、GSMという概念で説明されることがあります。GSMはGenitourinary Syndrome of Menopauseの略です。日本語では閉経関連泌尿生殖器症候群と呼ばれることがあります。腟や外陰部だけでなく、尿道や膀胱の症状も含む考え方です。
GSMでは、腟の乾燥、灼熱感、かゆみ、性交痛、潤滑不足、頻尿、尿意切迫感、排尿時痛、尿路感染の繰り返しなどが起こることがあります。Mayo Clinicは、GSMが閉経後だけでなく閉経前後の時期にも問題になりうると説明しています。日本産婦人科医会も、更年期の性交痛について、女性ホルモンの低下により腟粘膜が萎縮し、摩擦に耐えにくくなることがあると案内しています。
更年期の乾燥は、「年齢だから我慢するもの」ではありません。GSMは生活の質に影響します。痛みがあると、性行為だけでなく、自己肯定感、睡眠、関係性、外出、運動にも影響します。市販の潤滑剤や保湿剤で楽になる人もいます。婦人科でホルモン補充療法や腟局所治療を相談できる人もいます。
腟の乾燥は、更年期以降の人だけの悩みではありません。20代、30代でも起こります。原因は一つではありません。妊娠や授乳、ホルモン避妊薬、抗うつ薬、抗ヒスタミン薬、ストレス、睡眠不足、過度なダイエット、体調不良、糖尿病、シェーグレン症候群などが関係することがあります。
授乳中は、プロラクチンが高くなり、排卵やエストロゲンの状態が変わります。そのため、産後しばらくは腟が乾きやすく、性交痛が出やすいことがあります。出産による会陰の傷、帝王切開後の体の回復、睡眠不足、育児疲れ、性行為への不安も重なります。これは気持ちの問題だけではありません。
低用量ピルやホルモン避妊薬で乾燥を感じる人もいます。すべての人に起こるわけではありません。けれど、服用開始後から性欲低下、濡れにくさ、痛み、外陰部の違和感が出た場合は、処方元に相談する価値があります。薬を自己判断で急にやめるのではなく、避妊目的、月経困難症治療、PMS対策など、使っている理由を含めて相談しましょう。
抗うつ薬、抗不安薬、抗ヒスタミン薬、風邪薬、降圧薬などでも、性的反応や分泌に影響することがあります。薬の副作用は個人差があります。薬が原因かもしれないと思っても、勝手に中止するのは危険です。主治医に「腟の乾燥や性機能の変化がある」と伝えると、薬の種類、量、飲む時間、別の治療法を検討できる場合があります。
糖尿病や自己免疫疾患も関係することがあります。血糖コントロールが不安定だと、感染や乾燥、かゆみが起こりやすいことがあります。シェーグレン症候群では、目や口だけでなく、全身の粘膜の乾燥が問題になることがあります。腟の乾燥だけでなく、目が乾く、口が渇く、虫歯が増えた、関節痛がある、強い疲労感がある場合は、内科的な相談も必要です。
腟の乾燥はホルモンだけで説明できません。緊張、不安、疲労、睡眠不足、急かされている感覚、痛みへの恐怖、関係性の不満も影響します。体は安全だと感じにくいとき、リラックスしにくくなります。リラックスできないと、血流や潤滑の反応も起こりにくくなります。
性的な反応は、スイッチのように一瞬で入るものではありません。特に疲れているとき、気になることが多いとき、体調が悪いときは、心と体の準備に時間がかかります。相手に悪いと思って急ぐほど、体が置いていかれます。痛みを我慢した経験があると、次回は始まる前から緊張します。
「好きなら濡れるはず」という思い込みは、かなり乱暴です。好きでも緊張します。安心していても疲れていれば反応しにくいことがあります。性欲があっても、腟の組織が乾いていれば痛みます。反対に、体が反応していても同意しているとは限りません。体の反応と気持ちと同意は、分けて考える必要があります。
ストレスが関係している場合は、潤滑剤だけでなく、性行為の前後の環境も見直します。眠い、寒い、空腹、酔っている、時間がない、痛みを言い出せない、避妊や性感染症が不安、家族や同居人が気になる。こうした条件は、体の反応に影響します。十分な時間、安心できる場所、痛ければ止められる約束があるだけで変わる人もいます。
それでも痛みが続く場合は、心理だけで片づけないでください。痛みの背景に、GSM、感染症、外陰部の皮膚疾患、骨盤底筋の過緊張、子宮内膜症、腟前庭痛などがあることもあります。「メンタルのせい」と言われて終わった人ほど、別の婦人科や専門外来で相談する意味があります。
腟や外陰部の不快感があると、清潔にしようとして洗いすぎてしまうことがあります。けれど、腟の中を洗う必要はありません。腟には自浄作用があります。Office on Women's Healthは、腟洗浄、いわゆるダウチングを推奨せず、腟内の細菌バランスや酸性環境を乱し、感染や刺激につながる可能性があると説明しています。
外陰部は、ぬるま湯でやさしく洗うだけでも十分なことがあります。石けんを使う場合は、香料が強いもの、スクラブ、殺菌成分の強いもの、膣内まで洗うタイプは避けます。NHSも、香り付きの石けん、洗浄料、ダウチングを腟まわりに使わないよう案内しています。
「デリケートゾーン用」と書かれていても、すべての人に合うわけではありません。しみる、乾く、かゆくなる、赤くなる場合は中止しましょう。おりもののにおいが気になるからといって、香りで隠すケアを続けると、原因の発見が遅れることがあります。強いにおい、灰色や黄色や緑色のおりもの、泡状のおりもの、かゆみ、痛みがある場合は、感染症や炎症の確認が必要です。
下着やナプキン、吸水ショーツ、ライナーが合わないこともあります。毎日ライナーを使うと蒸れや摩擦で外陰部が荒れる人もいます。通気性のよい下着にする、締めつけの強い服を避ける、汗をかいたら着替える、ナプキンをこまめに替える、といった地味な工夫で楽になることがあります。
腟の乾燥対策は、「洗う」より「守る」に近いです。摩擦を減らす。刺激物を減らす。乾いている粘膜を保湿する。痛みがあるときは休む。必要なら治療する。この順番で考えると、過剰ケアに向かいにくくなります。
腟の乾燥対策で最初に知っておきたいのが、潤滑剤と腟保湿剤の違いです。潤滑剤は、性行為や挿入の直前に使い、摩擦を減らすものです。腟保湿剤は、性行為の有無に関係なく、数日おきなど定期的に使い、乾燥感をやわらげるものです。
Mayo Clinicは、腟保湿剤は数日ごとに使うことがあり、潤滑剤より効果が長く続きやすいと説明しています。一方、潤滑剤は性行為の直前に使い、痛みや摩擦を減らす目的です。NHSも、水性潤滑剤と腟保湿剤をセルフケアとして挙げています。
「性行為のときだけ乾く」なら、まず潤滑剤が役立つことがあります。「日常的にヒリヒリする」「下着でも痛い」「挿入がなくても乾く」なら、腟保湿剤も検討します。更年期以降のGSMでは、潤滑剤だけでは足りず、腟保湿剤や医療機関での治療が必要になることがあります。
潤滑剤は、少なめに我慢して使うものではありません。摩擦があるなら十分な量を使います。途中で乾いたら足します。相手の性器、指、コンドーム、トイ、腟口まわりなど、摩擦が起こる場所に使います。痛みが出てから足すより、痛みが出る前に使うほうが体が緊張しにくくなります。
腟保湿剤は、商品ごとの使用頻度を守ります。毎日使うものもあれば、数日おきのものもあります。初めて使うときは、少量から試し、しみる、かゆい、赤くなる、おりものが変わる場合は中止します。妊娠中、授乳中、がん治療中、外陰部に傷がある人は、使う前に医療者へ相談したほうがよい場合があります。
潤滑剤には、水性、シリコン性、油性があります。初心者が選びやすいのは水性です。水性は洗い流しやすく、コンドームや多くのトイと合わせやすい傾向があります。ただし乾きやすいので、途中で足す必要があります。
シリコン性は長持ちしやすく、水場でも流れにくいことがあります。乾きやすい人には合う場合があります。ただし、シリコン製のプレジャートイと相性が悪い商品もあります。素材を傷めることがあるため、商品の説明を確認してください。
油性は長持ちしますが、ラテックスコンドームとは相性が悪いです。Mayo ClinicやACOGの資料でも、石油系や油性の製品はラテックスコンドームを劣化させる可能性があるとされています。妊娠予防や性感染症予防のためにコンドームを使う場合は、水性またはコンドーム対応のシリコン性を選ぶのが基本です。
避けたいのは、刺激が強いものです。温感、冷感、香料、味付き、殺精子剤入り、強い清涼感、グリセリンが多いものなどは、人によってしみることがあります。Mayo Clinicは、感受性がある人ではグリセリンやカプサイシンなどの温感成分で刺激が出ることがあると説明しています。敏感な人は、成分がシンプルで、香りが少なく、低刺激をうたうものから試すとよいでしょう。
潤滑剤を使うことは、努力不足ではありません。眼が乾くときに目薬を使うのと同じです。摩擦を減らす道具です。痛みを我慢して続けるほうが、体にとっても関係にとっても負担になります。
パートナーが「自分に魅力がないということか」と受け取る場合は、説明を変えます。「あなたの問題ではなく、体の摩擦を減らしたい」「痛くないほうが集中できる」「コンドームと同じで、安心のための道具」と伝えます。理解しない相手に合わせて痛みを我慢する必要はありません。
セルフケアで改善しない腟の乾燥は、婦人科で相談できます。相談内容は、痛みの場所、いつからか、月経周期との関係、出産や授乳の有無、薬、避妊法、感染症の不安、出血、おりもの、排尿症状、性行為の内容、過去の病気などです。言いにくいこともありますが、検査や治療を選ぶための情報です。
更年期や閉経後のGSMでは、ホルモン補充療法や腟局所のエストロゲン製剤が選択肢になることがあります。Mayo Clinicは、保湿剤や潤滑剤で十分でない場合に、ホルモン治療や処方薬などが検討されると説明しています。日本産婦人科医会も、更年期の性交痛ではゼリーやホルモン補充療法が助けになる場合があると案内しています。
ただし、ホルモン治療は誰にでも同じように使えるものではありません。乳がん、子宮体がん、血栓症、原因不明の出血、肝疾患、妊娠の可能性など、注意が必要な状況があります。がん治療中やホルモン感受性がんの既往がある人は、婦人科だけでなく主治医や腫瘍内科と連携して判断します。
ACOGの臨床コンセンサスでは、エストロゲン依存性乳がんの既往がある人の泌尿生殖器症状には、まず非ホルモン療法を第一選択として考え、十分でない場合にはリスクと利益を話し合ったうえで低用量腟エストロゲンなどを検討すると整理されています。これは自己判断で使うという意味ではありません。主治医と共有意思決定をするという意味です。
ホルモン以外の治療として、腟保湿剤、ヒアルロン酸系の保湿剤、潤滑剤、骨盤底理学療法、外陰部皮膚疾患の治療、感染症治療、痛みの治療、カウンセリングが必要になる場合もあります。原因が複数ある場合は、治療も複数を組み合わせます。
診察が怖い場合は、最初に「痛みが強いので内診が不安です」と伝えてください。内診を必ず最初にするとは限りません。問診から始め、必要な検査を説明してもらえます。痛みがある人ほど、無理な診察でつらい経験を増やさないことが大切です。
腟の乾燥はセルフケアで様子を見られることもあります。けれど、受診したほうがよいサインがあります。数週間セルフケアを続けても改善しない。日常生活に影響している。性行為が痛くて避けるようになった。出血がある。閉経後に出血した。おりものがいつもと違う。強いかゆみや悪臭がある。排尿時痛や頻尿がある。下腹部痛や発熱がある。このような場合は、婦人科や泌尿器科で相談しましょう。
NHSは、腟乾燥が数週間続きセルフケアで改善しない場合、日常生活に影響する場合、異常なおりものや出血がある場合に受診を勧めています。日本産婦人科医会も、閉経後の出血では子宮体がんや子宮頸がんなどの確認が必要であり、不正出血があったら産婦人科を受診するよう案内しています。
性交後の少量出血は、乾燥による摩擦でも起こりえます。けれど、毎回出る、量が増える、閉経後に起こる、痛みやおりものの変化を伴う場合は、検査が必要です。子宮頸がん検診を長く受けていない人も、これを機に確認しましょう。
強い性交痛も受診の目安です。潤滑剤を使っても痛い。挿入の入口が焼けるように痛い。奥が突かれると痛い。性行為後も痛みが続く。タンポンや指でも痛い。こうした痛みは、腟乾燥だけでなく、外陰痛、腟前庭痛、骨盤底筋の過緊張、子宮内膜症、卵巣嚢腫、感染症などが関係することがあります。
性感染症の可能性がある場合も検査が必要です。新しいパートナー、コンドームなしの性行為、相手の感染がわかった、痛み、おりもの、出血、排尿時痛、性器や口や肛門のできものがある場合は、性感染症検査を相談しましょう。乾燥だと思っていた痛みが、感染や炎症で悪化していることもあります。
腟の乾燥や性交痛は、一人だけで解決しようとすると苦しくなります。相手がいる場合は、短く具体的に伝えることが大切です。「最近、乾燥して痛みが出やすい」「あなたが悪いという話ではない」「痛くない方法を一緒に探したい」「潤滑剤を使いたい」「痛いときは止めたい」。このくらいで十分です。
伝えるタイミングは、性行為の最中だけでなく、ふだんの落ち着いた時間が向いています。最中に痛みを伝えるのは難しいことがあります。事前に合図を決めておくと楽です。「痛いと言ったらすぐ止める」「休むと言ったら理由を問い詰めない」「今日は挿入なしにする」といった約束は、安心を作ります。
パートナーには、潤滑剤を一緒に選んでもらうのもよい方法です。片方だけの問題ではなく、二人の快適さのための道具にできます。水性、シリコン性、コンドーム対応、香料なしなど、条件を一緒に確認します。合わなかったら別の商品に変えます。
大切なのは、痛みを我慢しないことです。痛いまま続けると、体は性行為を危険なものとして学習します。次回からさらに緊張します。関係を守るために我慢するつもりでも、長い目で見ると逆効果です。止めること、休むこと、方法を変えることは、関係を壊す行為ではありません。
相手が不機嫌になる、責める、潤滑剤を拒否する、痛みを軽く扱う、コンドームを嫌がる、あなたの境界線を無視する場合は、その関係性自体を見直してよいです。性行為は、同意と安心が前提です。乾燥対策は、単なる体のケアではなく、自分の境界線を守るケアでもあります。
まず、痛みや乾燥がある日は無理をしないことです。腟や外陰部にヒリヒリ感があるときは、摩擦を増やす行為を休みます。性行為だけでなく、長時間の自転車、きつい下着、締めつけの強い服、長時間のナプキンやライナーも刺激になることがあります。
次に、洗い方を見直します。腟の中は洗いません。外陰部はぬるま湯でやさしく洗います。香り付きの石けん、膣洗浄、スプレー、パウダー、強い殺菌系の洗浄料は避けます。しみる商品は「よく効いている」のではなく、刺激が強いサインかもしれません。
性行為や挿入がある場合は、潤滑剤を最初から使います。痛みが出たら足すのではなく、痛みが出る前に使います。コンドームを使う場合は、コンドーム対応の商品を選びます。油性のものやワセリン、食用油、ボディクリームは避けます。腟用ではないクリームやローションは、刺激や感染の原因になることがあります。
日常的な乾燥がある場合は、腟保湿剤を検討します。数日おきに使うタイプがあります。使用中にしみる、かゆい、赤くなる、おりものが変わる場合は中止します。更年期以降で乾燥が続く人、授乳中で痛みが強い人、がん治療中の人は、自己判断だけでなく医療者に相談すると安心です。
睡眠とストレスも見直します。睡眠不足や疲労が強いと、痛みに敏感になります。性行為の前に急いで気持ちを切り替えるのが難しい人は、時間帯を変える、予定を詰めない、入浴で体を温める、寒さを避ける、照明や音を調整するなど、安心しやすい条件を整えます。
そして、症状メモを残します。いつ乾くか。痛みは入口か奥か。出血はあるか。おりものは変わったか。月経周期との関係はあるか。薬を始めた時期と重なるか。授乳中か。ストレスや睡眠不足があるか。メモがあると、婦人科で説明しやすくなります。
更年期や閉経後に始まった乾燥なら、GSMを考えます。乾燥、性交痛、頻尿、尿意切迫感、尿路感染の繰り返しがあるなら、婦人科で相談しましょう。潤滑剤や保湿剤だけで十分な人もいますが、腟局所エストロゲンなどの治療が合う人もいます。
出産後や授乳中に始まった乾燥なら、ホルモン変化と体の回復を考えます。会陰切開や裂傷の痛み、帝王切開後の緊張、睡眠不足、育児疲れも関係します。痛みが続く場合は、産後健診後でも婦人科や助産師に相談してください。産後だから仕方ないと放置しないことが大切です。
薬を始めてから乾燥や性欲低下が出たなら、処方元に相談します。抗うつ薬、抗ヒスタミン薬、ホルモン避妊薬、抗エストロゲン薬などが関係することがあります。薬をやめるかどうかではなく、選択肢を一緒に整理する相談です。
洗浄や香り付きケアを始めてから悪化したなら、いったん中止します。腟内洗浄はしません。外陰部はやさしく洗います。数日から数週間で落ち着くこともありますが、かゆみ、悪臭、おりものの変化、痛みがある場合は感染や炎症の確認が必要です。
特定の相手や場面でだけ乾くなら、安心、同意、時間、避妊、性感染症不安、痛みの記憶を見直します。これは「気の持ちよう」ではありません。体が安全を感じる条件の問題です。相手と話しても改善しない、怖さや嫌悪感が強い、過去の性被害が関係しているかもしれない場合は、カウンセリングや性の健康に理解のある医療者につながることも選択肢です。
そうとは限りません。腟のうるおいは、ホルモン、血流、疲労、ストレス、薬、痛みへの不安、粘膜の状態に左右されます。好きでも乾くことはあります。気持ちの証明として扱わないでください。
癖になるという考え方は適切ではありません。潤滑剤は摩擦を減らす道具です。痛みを防ぐために使うことは自然です。乾燥の原因が改善すれば、必要な量が変わることはあります。
最初は水性が使いやすいです。洗いやすく、コンドームや多くのトイと合わせやすいからです。乾きやすい人はシリコン性が合うこともあります。ただし、シリコン製トイとの相性や商品説明を確認してください。
腟用ではないワセリン、食用油、ボディクリームはおすすめしません。刺激や感染の原因になることがあります。ラテックスコンドームを使う場合、油性のものはコンドームを劣化させる可能性があります。コンドーム対応の潤滑剤を選びましょう。
治療で楽になる可能性があります。潤滑剤、腟保湿剤、ホルモン補充療法、腟局所エストロゲンなどがあります。乳がんなどの既往、出血、持病、薬によって選べる治療が変わるため、婦人科で相談してください。
我慢して慣らすのはおすすめしません。痛みを我慢すると、粘膜の傷や筋肉の緊張が悪化し、次回の痛みが強くなることがあります。痛みがあるときは止める、潤滑剤を使う、挿入以外にする、受診する、という方向で考えましょう。
閉経後の出血は、少量でも婦人科で確認してください。乾燥や萎縮性腟炎で起こることもありますが、子宮頸がんや子宮体がんなどの確認が必要です。日本産婦人科医会も、不正出血があったら産婦人科を受診するよう案内しています。
腟の乾燥や「濡れない」悩みは、恥ずかしいことではありません。気持ちの弱さでも、魅力不足でもありません。更年期、授乳、薬、ストレス、睡眠不足、洗いすぎ、感染、皮膚疾患、痛みの記憶などが関係します。
まずは、痛みを我慢しないことです。腟内洗浄や香り付きケアを避ける。潤滑剤を十分に使う。日常的な乾燥には腟保湿剤を検討する。コンドームを使うなら対応する潤滑剤を選ぶ。パートナーには短く具体的に伝える。数週間続く、生活に影響する、出血やおりものの変化がある、閉経後の出血がある場合は受診する。この順番で進めましょう。
乾燥は、我慢するしかない症状ではありません。原因を分けて見れば、できることはあります。体の声を責めるのではなく、体が痛くない条件を整える。その視点から始めることが、性の健康と関係性を守る一歩になります。
目次
腟の乾燥とは何が起きている状態か いちばん多い原因はエストロゲンの低下 若い年代でも腟の乾燥は起こる ストレスと緊張は「濡れにくさ」に影響する 洗いすぎと香り付きケアが乾燥を悪化させることがある 潤滑剤と腟保湿剤は目的が違う 潤滑剤の選び方 婦人科で相談できる治療 受診したほうがよいサイン パートナーにどう伝えるか 今日からできるセルフケア 原因別の考え方 よくある質問 濡れないのは相手を好きではないからですか? 潤滑剤を使うと癖になりますか? 水性とシリコン性はどちらがいいですか? ワセリンやオイルを使ってもいいですか? 更年期の乾燥は治療できますか? 性交痛があるとき、我慢して慣らしたほうがいいですか? 閉経後に少し出血しました。乾燥なら様子見でいいですか? まとめ 参考にした一次情報